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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』


 三宅香帆(2024)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』集英社新書(※ネタバレあり)。スマホやネットは見ることができるのになぜ本が読めないのか?私もそう思う時が多々ある。本書自体ここまで読む機会を逸していた‥
 
 読書行為は、実はかなり高度な機能を要する(メンタルヘルス上の支障や機能障害等さまざまな理由でも読めなくなる)ことは知られるところであろう。本書後半でメンタルヘルスとの関連性も記されるが、ここでは主に、読もうと思えば読める状態にある人がなぜ読めなくなるのか?について、読書史と労働との関係から記されている。

 読書とは「労働」と「文化」の両立という視点、〝読書しようと思う意思の有無に、社会の階級格差が影響を及ぼしている〟(29ページ)まさにそうなのだろう。個人の課題と社会課題の線引きは、このところ読んだ新書に共通する視点とも思った。

 また資本主義は「全身」を求め、結果〝時間を奪い合われている〟(255ページ)。会社は労働者に対して、家庭は配偶者に対して‥ひとつの文脈に寄りすぎずいかに生き働き読むのかという提言でまとめられていた。(2025年6月14日)