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『フォーチュンクッキー(原題:FREMONT)』


 先日見た映画。邦題は『フォーチュンクッキー』原題は『FREMONT』(以下ネタバレありです)。

 アフガニスタンの米軍基地で通訳をしていた主人公。アフガンの方が多く集まるアメリカFREMONTに国外脱出後移住、フォーチュンクッキー工場で働いている。女性であること、米軍通訳だったこと、移住者であること、裏切り者扱いされ続けること、幾重にも苦労があるが多くを語りすぎることなく淡々と時にユーモアを含み物語がすすむ。

 キーパーソンの1人である精神科医が良い味を出している。深圳出身の雇い主も。寝られず睡眠薬だけもらいたい彼女、少しずつ進むPTSDの治療セッション(プロボノ枠)はおそらく世間一般にイメージされるようなそれとひと味違う。

 主人公自身が変化を起こしていく姿が美しい。フォーチュンクッキーの占い言葉もよかった。

 偶然出会う雰囲気抜群の自動車修理工の男性。寡黙で主人公とどこか同質であることが出会いの一瞬で分かる。視線の憂いでそれらが伝わるのだから、俳優さんってやっぱりすごい。

 いずれも静かなプロセスで湿度が低い(が、あたたかさも感じる)。だからこそ一瞬の感情の動きに惹きつけられた。それらと全編モノクロームの画面がぴたっとはまる。重みある背景を思いつつ、一方で主人公と周囲の関係性、日常の会話、も楽しめた。また観たいと思える好きなタイプの映画だった。(2025年7月10日)