小川公代(2025)ケアの物語 フランケンシュタインから始める 岩波新書新赤版
twililightさんで数冊購入した中の1冊、思いがけずサイン本で嬉しかった。『ケアの倫理とエンパワメント』に続き、私にとって2冊目の著者作品。
「はじめに」のケアにおけるダブルヴィジョンの必要性、は自身も介護者となった今深くうなづくところ。
1章の「戦争」では、〝国家規模の共同体であれ、個人であれ、他者の善性を信じることのできない人間は力による支配や暴力に訴え、相手を威嚇したりする。そうしないと、自分や自分が帰属する国家の安全や利益を担保できないと思い込んでいるからだ〟(2ページ)とある。
2章の「論破と対話」では、このところ対話とされているものはともすれば論破前提であり、共話となっていないことが指摘されている。ナラティブを単純化しないことは私の職業上必須であり、特にこの章を興味深く読んだ。
4章の「マンスプレイニング」に関してはつい昨日もマンスプのめんどくささにでくわし、この日常茶飯事に自身がどう向きあいたいのかあらためて考えている。向き合い損ねるのはもうやめたい。
そして、あとがきには〝自分の足元と、世界で起きていることがつながっていることを示す〟という言葉に共感して書かれたとある。全て地続き、本書はまさにそんな語り口と感じた。(2025年7月28日)