フロイトとアンナ・O

リチャード・A・スクーズ著 岡元彩子・馬場謙一共訳(2015)フロイトとアンナ・O
 最初の精神分析は失敗したのか みすず書房

 随分長い間積読してしまった。『眠れるアンナ・O』(ジェフリー・ディーヴァーの帯コメントと池田真紀子訳!期待大のミステリー)を読もうとしているところ、本書のことをふと思い出した。

 アンナ・Oは礎の症例、その後精神分析が発展することとなる。治療終了までの物語と、その後に何があったかの厳密な議論、本症例へのバランスのとれた評価を求め、歴史が紐解かれていく。理論や技法の追求とは異なる視点でミステリー味もある(結局いろいろ気になりまた別の古本を探してしまっている)。

 治る、治す、回復とは何か?生まれたての学問が発展していく紆余曲折の一部を知ることができる。定説となってしまった失敗説の後押しをした巨人たちも登場し、個々の立場が絡みあう。

 個人的にはやはりその後のアンナ・O=ベルタ・パッペンハイムがいかに生きたかが肝要と思っているが‥精神分析学派ならばもっと異なる読み方ができるのかもしれない。いち学史好きとして興味深く読んだ(訳がとてもよかった)。(2025年9月8日)