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アウシュヴィッツで君を想う


 エディ・デ・ウィンド著 塩﨑香織訳(2021)アウシュヴィッツで君を想う 早川書房

 オランダ・ハーグ生まれのユダヤ系オランダ人精神科医・精神分析家の著者が、別の収容所で出会い結婚した妻とともに1943年アウシュヴィッツ強制収容所に移送され生還。戦争終結前に収容所の中で書かれた手記である(家族によるあとがきを加えた新装版が、アウシュヴィッツ解放から75年を経て出版された)。

 全編にわたり、生きる希望や人間の悪/善性だけでは語り尽くせぬテーマが含まれていたように思う。被害と加害(や反転)に関しても考えこんだ。以下内容ネタバレを含む。

 書名からも想像できるよう共に収容所に入れられてしまった妻の存在が生き抜く力となったことは間違いない。

 ただ、訳者あとがきによると収容所で受けた傷はお互いにあまりに深く結婚生活は12年後に終わりを迎えたそう。巻末のご家族によるあとがきも読むにつれ複雑な気持ちになる(アウシュヴィッツの医師であったあの悪名高き人物も意外な形で登場する)。

 とりわけ繰り返し行われ残忍の限りを尽くした暴虐。人体実験(例えば女性を対象にした不妊化のめちゃくちゃな実験、これは集団不妊化と人種の根絶に関するもの)の描写の連続には、私自身一種麻痺するような感覚すら起こった。

 また解放後、著者・妻ともに長くトラウマに苦しんだ事実をやはり重くとらえる。離婚後には今でいう二次被害にもあったそうだ。これも大変つらいもので、おそらく亡くなるまで相当苦しまれたはずだ。精神科医として帰国後開業し、戦争トラウマの問題に取り組まれていたとのこと。当事者でありながら研究/サポートをする立場にあったことは何重にもご苦労があっただろう。(2025年11月16日)