2024年ゴールデンウィーク小寺記念精神分析研究財団にて故狩野先生の蔵書公開と無料頒布会があった。その際にありがたく分けていただいた一冊。
ポストクライン派のD.メルツァーとその義理の娘M.H.ウィリアムズ(文芸批評家)の共著。「本書は芸術と精神分析のdiscourseであるに留まらず、いわばintercourseでもある」(解題:287ページ)とある。
私自身は精神分析学派ではないため読みが相当甘くなってしまうのは残念な点だ(さらに、本著内容はそれなりに難解。自身の理解を超えた渦に放り込まれたい時に手にする)。そういう訳で1年以上行きつ戻りつしながら読み、わからなさに留まり続けている。
特に気に入って何度か読んでいるのは「第7章 未知の国『ハムレット』における美的葛藤の形」。M.H.ウィリアムズ章のこちらは、原作ハムレットや解説記事と行き来し想像をふくらませている。
とりわけ、物語の中でホレイショーをいかにとらえるか?その役割への言及が面白い。ハムレットの登場人物の中で、個人的に惹かれる存在だったホレイショー。観察者/コンテイナー機能/部外者/補完者、その受動性と留まる人となること‥なぜ自身(主人公への同一化を少しもせずむしろ)ホレイショーの存在が気になり惹かれるのか、少し繋がった気がする。(2025年10月3日)